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2019/02/04
ゲンゴロウが結ぶ地域と大学の協働のかたち。〜前編・龍谷大学生インタビュー〜
地域・大学連携
三重・森本地区では現在、龍谷大学と一緒になって地域のブランド米を作っていこうという取り組みがなされています。その龍谷大学の皆さんが今年度の報告会を三重・森本地区で開催すると聞き、お話をうかがいに行って来ました。
地域に来る際は通常2泊3日の行程にするとのこと。せっかくの機会なので今回は学生さん達へのインタビューも兼ねて、報告会の準備の時間からお邪魔することに。
当日の朝、学生さん達の宿泊する三重公民館に行くと、引率のお二人の先生が笑顔で迎え入れてくれました。熱を持って勢いよく話す金先生と穏やかに語る谷垣先生。面白そうな話が聞けそうな予感がします。
ゲンゴロウ米ができるまで
早速お二人の先生にこの協働事業の経緯についてお話を聞いてみると、2015年に調査が始まった当初は、正直何から手をつけたらいいかわからなかったとのこと。学生さん達と一緒にとにかく手と足を動かし、地域にどんな資源があるのか地道に調査していったそうです。
その状況を一歩進めるきっかけとなったのは、地域の田んぼに棲むゲンゴロウでした。2016年、地域と大学の協働事業で田んぼの生物調査を行った際、絶滅危惧種に指定された2種類のゲンゴロウが発見されました。そこでゲンゴロウ達のすむ綺麗な水質を生かし、地域のブランド米を作っていくことを農家さんに提案したのです。
しかし、ゲンゴロウの棲みやすい環境を維持しながら米作りをするのは簡単なことではありません。田んぼに引く水を温めるための「ひよせ」と呼ばれる溝が必要となってくるのですが、それを作るのが一苦労。地元の農家さんとなんども話し合いながら、少しずつ実現へ向け準備を進め、2017年から『ゲンゴロウ郷の米』として、生き物や環境にやさしい米作りに取り組むことになったそうです。
龍谷大学の学生さん達は『ゲンゴロウ郷の米』を立ち上げた後も、こうして定期的に三重森本に通い、農家さんだとなかなか手が回らない農法の研究や販売、ブランド化について調査を進めています。
先生方から事業の経緯をお聞きしたところで、今度は実際に調査演習に参加している学生さんにお話を聞いてみることに。20人ほどの学生さんがいましたが、その中でも2年以上この演習に参加している皆さんにお話を聞かせてもらいました。
この演習に参加しようと思ったきっかけ
西田さんや上村さん、朱さんは演習の体験という形で実際に三重森本に行った際、そこでの体験や活動する先輩の姿を見て、地域への興味が湧いたそう。河田さんは中国との国際比較(この演習では実際に中国の農村などを訪ねており、国際比較することも演習の目的の一つ)をできることにも魅力を感じたと語ってくれました。
また金本さんはこのメンバーの中では唯一、3年目の参加。最初は環境保全や地域への興味から参加したこの演習も、地域との繋がりができ、単位取得が関係なくなった今年も参加しているそう。
熱心に演習に取り組むみなさんにもう少し質問をしてみました。
印象に残っている活動について
西田さん「やっぱりクロゲンゴロウ(発見された2種のゲンゴロウうちの1つ)を見つけた時ですかね。あの時のことはよく覚えています」
朱さん「泥上げが大変でしたね。溝にたまった泥をすくい上げていく作業なんですが、何年もそのままにしておかれたところだったので。ビフォーアフターを見てもらいたい笑」
三重・森本地区の人のイメージについて
上村さん「みなさん優しいです。」
西田さん「隔たりがないですね、距離が近いというか」
金本さん「最初は多分、学生ということもあってお客さん扱いだったんですけど、年を重ねるごとに距離も近づいて来て。ゲンゴロウ米がきっかけになったのかな?今では地域の人が、自分の名前を覚えて呼んでくれるのが嬉しいです。」
実際にこのインタビュー中にも地域の方から「モチを作ったけどいらんか?」という電話がかかって来て、急遽みんなでできたてのモチを食べるという一幕も。この取り組みが地域にとけ込み始めていることを実感します。
今後の進路について
まだはっきりと決まっていないという人もいましたが、みなさん地域活性化やまちづくりといったことに興味があり、自治体の公務員としてそういった事業に関わって行きたいとのこと。実際この演習に参加した卒業生の中にも、自治体の公務員になっていった方は多いそうです。
西田さんや金本さんは大学院への進学を考えているとのこと。
西田さん「(進路選択の上で)この演習の影響も大きかったですね。まだ地域系か環境系か迷ってはいるんですけど。」
金本さん「来年修士課程になっても、この演習は参加するかも笑?」
昼ご飯の準備や報告会の準備で忙しい中、お話を聞かせていただきありがとうございました。
お話を聞かせていただき、この三重・森本地区での経験が学生のみなさんの中で確かに大きな存在になっていることを感じました。
ではなぜこの地区で地域と大学のいい関係性を築くことができたのか。それはこの後の報告会で垣間見ることができました。
後編の報告会編へと続く。
(K.S)